インターネットが齎した『合成の誤謬経済』

人間は利便性を求める生き物であるが、人間が行うべき仕事というものの大半は、その利便性を追求する過程で生じるものでもあった。生産者が効率化を目指し努力するのは、消費者の利便性を追求するニーズに応えるためのものであったが、そのニーズが人間の手を煩わすことなく満たされるシステムが出来上がってしまうと、当然のことながら、人間が行うべき仕事も無くなっていくことになる。  

不便な時代だからこそ人間が行う仕事が有り、便利な時代になると人間が行う仕事が無くなるというパラドックスが将来的に起こるだろうことは誰もが想像してはいたが、まさかインターネット技術の解放によって、そんな社会が自らの生きている時代に現実になるとは誰も想像だにしていなかったのではないだろうか? しかし、インターネット社会は僅か20年程度で、そのパラドックスを現代人にいとも容易く教えてくれた。  

これまで欲しい物を手に入れるために、交通費(電車賃やガソリン代)や労力を使用して、その商品が売られている目的地まで買いに行っていたものが、交通費は必要なく、時間も労力も伴わず、パソコンやスマホの画面から1クリックで購入できることは、消費者にとってはこの上なく便利なことで、まさに消費スタイルの理想の実現とも言える素晴らしい進歩でもあった。  

しかし、その理想が実現することによって、これまで消費活動に付随していた間接的な消費活動は抑えられることになり、結果的には経済は縮小するという負の現象も生まれた。(これも一種の合成の誤謬と言える)



どこかで聞いた話。マスメディアが大好きなネット企業のフリーライド論だったか。
リーマンショックの後に出されたこの本↓↓が

情報革命バブルの崩壊 (文春新書)
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文藝春秋
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内容(「BOOK」データベースより)
革命的なビジネスモデルを引っ提げ、爆発的成長を続けるかに見えたネット産業の世界は暗澹たる時代に入った。内側からネットのカネと言論を見届けてきた著者による戦慄の警鐘。
発売日: 2008/11

ネットビジネスの終わり (Voice select)
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PHP研究所
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内容紹介
新聞記事をインターネットで読む、テレビの代わりに無料動画を見る、
欲しい商品はネットの通販で購入する……。インターネットの普及により、
私たちの暮らしは便利になった。だが、それで本当に人生は楽しく、
豊かなものになっただろうか。著者は次のように記す。
「誰もが自由にアクセスでき、開放された社会の実現と言えば聞こえはいいのだが、
実際には黒字化の経営努力の乏しいベンチャー企業が豊富な市場からの
資金調達余力で既存ビジネスのダンピングを繰り返し、
従来からある産業基盤を緩やかに破壊してきたにすぎない」。
赤字でも存続が許される甘やかしを、「夢」と混同してはならない。
インターネットが社会を徐々に分断化し、破壊へと向かわせるとすれば、
それらを利用したビジネスも早晩、社会から必要とされず、消えゆくのみである。
本書は予言の書ではない。いま現実に起こっているビジネスにおける地殻変動を、
大局的な観点より読み解くものである。
発売日: 2009/10/22


しかし、その後アメリカではクリス・アンダーソンが『フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略』を出版します。新戦略という言葉が示すようにむしろ楽観的な方向性が示され、その線にそって若い起業家による無料のサービスが次々に生まれます。TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアが爆発的にブームになったのはご存じのとおりです。

フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略
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このことをどう見るかですね。従来の産業が確かに衰退していますが、新しい産業が生まれているのは間違いありません。雇用が生まれていないかというと必ずしもそうではないでしょう。統計数字を持っておりませんので、ここでは主張しません。どうも業態の変化、ミスマッチという視点が必要でしょう。

グローバル化の中での日本の製造業を中心とした産業構造がついていけてないという問題もみなければならないでしょう。いずれにせよ最初に引用した自由人さんの論考にはグローバルな視点が欠けているような印象を受けました。

そしてクリス・アンダーソンは『フリー』に続いて昨年『MAKERS―21世紀の産業革命が始まる 』を発行しました。そして3Dプリンターなどのブームが来ています。

MAKERS―21世紀の産業革命が始まる
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厳しい中で、若者が労働観、人生観を含めて変わってきていること、私は希望を持っています。

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