部分的に面白い箇所を紹介します。今になって振り返ってみると見えてくることがありますね。

--当時、米国の金交換停止は予想していたのですか。

 ◆どちらかと言えば「まさか」という感じが強かった。当時の為替レートではドルが高過ぎ、持続不可能とはわかっていたが、ドルを切り下げるだけで、金・ドル本位制は維持すると予想していた。しかし、米国の金準備は枯渇しつつあったし、金交換を続ければ米国の財政・金融政策は手足を縛られるわけで、「なぜアメリカだけが犠牲を払わなければいけないのか」という思いだったのだろう。

--固定相場の維持を模索した後、73年に為替は変動相場制に移行しました。

 ◆日本としては円が多少切り上がってでも固定相場を維持したかった。しかし米国は、それでは一時的な改善にしかならないと思っていて、力ある国に負担を分担せよという考え。逆に、米国がそこまで困っていたというのは予想できなかった。

--変動相場制に移行した後もドル基軸通貨体制は変わりませんでした。

 ◆弱まったとはいえ、米国の軍事力、経済力といった総合的な国力は断トツだったからだ。国力が、金に代わるドルの国際決済通貨としての裏付けとなり、米国も軍事費調達や国内の需要を維持するために基軸通貨としての地位を利用した。

なるほど国力がドルの裏づけということだったんですね。これでアメリカは軍事面で極めて怪しい振る舞いをするようになったわけです。

--米国債が格下げになるなど、ドルの信認が揺らいでいます。国際通貨体制の安定は取り戻せますか。

 ◆米国は国内の消費を維持するためにドルを刷って日本や中国からモノを買い、日中は輸出主導で経済成長する。そうした相互補完的な成長モデルが、米国の赤字の拡大でもたなくなっている。

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ドルをすり続けるというまさにこの仕組みが今回いよいよ破綻しそうになったわけですから、かなり深刻なわけです。もうおもちゃ銀行のようにFRBがドルを刷れないところまできちゃったわけです。

本当は基軸が基軸でなくなって40年経つということで、世界が自らを縛っておくアンカーを失い、ふわふわと漂い始めて、元に戻れない、いろいろなほころびが出ているということでしょう。

かなり根が深い問題です。国家(あるいは国家連合)が一気にゲームのルールを変える可能性がありますが、そうなったときの市場の混乱は計り知れません。

戦争のようなスーパーご破産手段を用いずにこの危機をどう乗り越えるのか、人類史的な課題に実は直面しています。

国家と市場の関係は、武士と商人の関係に似てますね。

どんどん貨幣を刷って消費を促せば、やがて今のようにそれを維持するために消費をし続けなければならなくなります。