18私大、有価証券含み損688億円…読売新聞調べ(読売新聞) - goo ニュース

>駒沢大など金融取引で多額の損失を出す私立大が相次いでいるが、全国の主な私大18大学が今年3月の決算時に有価証券の含み損を抱えており、その合計額は計688億円に上ることが読売新聞の調べでわかった。
 
>株価は今年9月中旬の米証券大手「リーマン・ブラザーズ」の経営 破綻 ( はたん ) を引き金に急落しており、多くの大学で含み損はいっそう膨らんでいるとみられる。
 
>デリバティブ(金融派生商品)取引で154億円の損失を出した駒大では、清算のために東京・世田谷のキャンパスやグラウンドを担保に入れ、金融機関から110億円の融資を受けた。リスクの高い取引で巨額の損失を被った責任を問われ、宮本延雄理事長が18日に開かれた理事会で解任された。南山大などを運営する南山学園と愛知大もそれぞれ34億円、28億円の損失を確定させている。

>読売新聞が取材した全国の32大学のうち、日大や帝京大を除く23大学が有価証券の含み損益を回答したが、このうち18大学は08年3月期に含み損を抱えていた。06年3月期の含み損益を明らかにしなかった駒大以外の17大学で比べると、5大学が含み益から含み損に転落し、10大学が含み損を拡大させている。

>約69億円の含み益から一転して、約225億円の含み損になった慶応大。収入を安定させる目的で株や投資信託、仕組み債などに分散投資しているといい、有価証券の取得額も1250億円と、23大学中で最も多い。広報室では「市場環境の変化で含み損が膨らんだ。長期保有が原則なので、現実の損失にはなっていない」と説明している。

>08年3月期に4億円の含み益を確保した明治大は「電力や鉄道のような安全な社債などで運用した結果」(財務課)とするが、こうしたケースは例外。立正大は内部指針で株への投資を禁止し、投資信託などをすべて円建てにしているが、今年3月期の含み損が96億円に上った。

>12月19日の日経平均株価(8588円)は、3月31日(1万2525円)の70%以下の水準まで落ち込んだ。多くの大学で元本が保証されていない投資信託や為替リスクのある債券を保有しており、損失額が膨らむ可能性がある

文部科学省私学部は「慎重な運用をすることが望ましい」としているが、私大の資産運用を規制する法律や通達はない。貸借対照表を一般に公開するルールもなく、財務の透明度アップを求める声も強まりそうだ。

この記事は、いろいろと面白いです。

まず668億円という数字が今年3月の数字であること。おそらくホームページ上に公開された各大学の財務諸表を丹念に調べた上で、主要大学に取材したものでしょう。当然、今年の3月なのでリーマンショック以後大きく膨らんでいることは記事に書かれているとおりです。

日本大学と帝京大学は取材に答えていませんが、両大学とも資産運用最上位の大学のひとつです。

さらに、やはり駒澤大学だけでなく追証(追加証拠金)が発生するハイリスクの金融商品に手を出していたと見られる大学がありました。

記事にある南山大学と愛知大学です。共に愛知県のマンモス規模の大学です。愛知県は大学の受験生獲得では比較的よいのですが、トヨタショックもあり、今年はどうなるか注目されますね。

昨年の入試で、愛知、東海圏から首都圏への受験生の流れがあったと分析している資料もありました。首都圏大学の南限が浜松を突破というような言い方でした。

さらに記事では必ずしも元本が保証されていない金融商品に投資しているということが書かれています。いままで報道された立正大学や札幌大学の大学広報からの話では、償還日まで待てば元本は返るので経営には心配ないということでしたが、必ずしもそうではないということがわかります。

そうだと思っていましたが…。

さて、最後の文部科学省のコメントです。

このブログでも取り上げましたが、今年の1月の時点で大学の資産運用が少ないという記事を流したのは、文部科学省の下部機関・私学振興共済事業団です。さらにいうと金融庁の強い要望で、大学で金融教育の講座を作るようにという通達を昨年出しています。証券会社から外部講師を派遣してもいいとまでいう内容です。まだ、その通達は生きているのだと思います。

大学の資産運用についての今年1月の記事|蛙の目

しかも、その私学振興共済事業団も資産運用でかなりの運用損を出している模様です。これはあとでまた書きます。

日本私立学校振興・共済事業団の資産運用について|蛙の目

現在、大学は少子化による「定員割れ」で経営が行き詰るという破綻のシナリオと金融危機による大学経営の危機というダブルの淘汰圧力に曝されているといってもいいでしょう。

これまで少子化による破綻のシナリオを回避するために文部科学省は金融機関淘汰のスキームをまねた「受け皿大学」という考えを元に、合併や吸収を水面下で進めていました。関西学院大学と聖和大学、慶応義塾大学と共立薬科大学の例がそうですが、その他にも、大学が高校を買収する例が多く見られます。つい最近でも岐阜商業高校の話題がニュース(ワイドショー)で出ているのをお昼を食べるために入った食堂でみました。

後で書きますが東洋経済の『金融ビジネス』11月号によると、これらのM&Aを裏で推進しているのがメガバンクだというのです。各学校(私立高校を含む)の経営状態を一番押さえているのがメインバンクと文部科学省だというのは、疑いようもありません。そこがM&A案件をマンモス私大に持ち込んでいるという構図が見えていて、そら恐ろしくなりました。まさに金融マネーゲームに、足を突っ込んでいるわけです。大きいことのいわゆるスケールメリットというか経済効率というか、そういうことで、この少子化のサバイバル戦を乗り切ろうという焦りが、受験生いや大学教育を置き去りにしてなされているのです。

定員割れ比率だけを取り上げて、文部科学省に乗せられてマスコミが危機を煽るやり方の問題点を私は指摘してきました。確かに定員割れを起こした大学数は多いのですが、その数はかなりイメージよりも少ないのです。私はこの定員割大学数というのは淘汰を進めるためのプロパガンダだと見ています。

今回読売新聞が取材を元に記事にしたのですが、実はここにももうひとつの問題があります。大学の広報体制の問題です。アンケートや取材にどこが責任を持って答えるか、その情報管理ができているかということです。正しい情報を積極的に公開すべきだと思いますが、いい加減な情報を管理がないまま流すということが多いのです。この記事でも全然できていないということがわかります。東洋経済から出ている『金融ビジネス11月号』の「大学の資産の特集」のアンケートなどひどいものです。関係者はぜひご覧ください。あれは、後で学内で大問題になった大学があるでしょうね。なってないとすると、もっと問題なのですが…。


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南山学園が34億円損失 金融危機、デリバティブで(産経新聞) - goo ニュース

愛知大も運用損28億円 「新キャンパス計画影響なし」(朝日新聞) - goo ニュース

>大学によると、損失を出したのは07年に始めた「通貨スワップ」と呼ばれる取引。同大の場合、円―米ドル間で取引をしており、円高の進行で損失がふくらむ可能性が高くなったため解約を決めた。

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