アメリカの大学は寄付金も多く、というか学長はいかにファンドレイジング(寄付金集め)がうまいかで評価される風潮があるようです。

そうして集めた資金を資産運用して、それこそ巨額のファンドをもっていると言われてきましたし、日本の私立大学も、それをまねする傾向にありました。

寄付金こそ少ないですが、学生が納めた学納金、入試手数料(これはマンモス大学になるとバカにならない額になります。一人3万5000円くらいですが、早稲田、慶応などは10万人位の受験生がいるわけで、その額は数十億と信じられないくらいの額です。)から、基本金組み入れという名前の余剰金積み立てを行い、それを運用にまわすということを積極的にやってきていました。(それに補助金というのがありますが、これはさすがに資産運用にまわすわけにはいかないので教育研究費に使われていると思います。)


背景には少子化に備えてサバイバルしていかなければならないという焦りのようなものがあるのです。そのためには施設を新しくし、学部を新しくするということで、受験生を集めなければならないという思考回路に陥り、そのために基本金を組み入れ、運用して益を出すということに走ったわけです。

うまくいっている時は富めるものはますます富みというような感じでした。まさに規模の経済学で小さな大学は自転車操業状態なのに、大きな大学は、儲かるという仕組みです。大体学生総数で5000人くらいはないと、経営のメリットがないという話を聞いたことがあります。(ところが私立大学の7割5分は5000人以下です)

とここまで書いて、はたと思ったこと。日本の問題はさておくとして…。

ということは、アメリカの大学の方は健全な運用と思われてきましたが、待てよ、です。多分、今回の金融危機でかなりの損害を出しているでしょうね。

だって予測を超えたクラッシュなわけですから。

ありました。

駒大の運用失敗 - 漂流する身体。

上記のコメント欄に以下の記事リンクが紹介されていました。

Tough Times Strain Colleges Rich and Poor
- NYTimes.com

運用の損失までのことは書いていませんが、大幅な予算のカット、施設の建設計画の延期、奨学金制度の見直しが起こっているようです。学費の収入が減り、寄付も減っているというようなことが書いてあります。学生が学費を払えずにいるということも。

これまで世界の大学の中でアメリカが一人勝ちだったのですが、今回の金融危機はまさに、高等教育を直撃しているようですね。

アメリカの私立大学の学費は日本の3から4倍にまでなっていましたから、こうなると大変です。キャリアをつけステップアップしていくという資格志向、学歴志向が実は進んでいたのです。おそらく志願者が激減するでしょう。

Economy strikes America’s richest university
- School Inc.- msnbc.com

アメリカの最も裕福な大学が経済的打撃といく記事ですが、ハーバード大学のことです。
こちらの記事は、まさに運用の話です。

>The university has refused to say exactly how much it lost in the meltdown.
大学側はどのくらいの損失か言いたがらない。

>But Moody's Investors Service has projected losses of 30 percent forcollege and university endowments overall this year. If that wereapplied to Harvard, it would mean a drop of $11 billion.

しかしムーディによると全大学の基金の30%が失われたと試算しているので、これをハーバード大に当てはめると11億ドル(1100億円くらい)が失われたことになる。

>Harvard President Drew Gilpin Faust, in an e-mail Monday to faculty,staff and students, warned only of "unprecedented endowment losses" andsaid the school is looking at ways to cut spending.

学長が月曜日に教授会、職員、学生に出したe-mailには、ただ「空前の資産の損失」といい、支出の削減を考えていると書いてあるだけだ。

なるほど金融危機は大学のこれまでのあり方もかえるかもしれません。

【関連記事】

大学経営になぜ金融危機が直撃したのか 立正大、駒沢大の多額損失計上の背景
(MONEYzine) - Yahoo!
ニュース
>米国では2兆5000億円の基金を有したハーバード大学が、過去10年の平均運用利回り15%という高いパフォーマンスを見せており、またイェール大学、プリンストン大学なども高収益を何年にも渡って得ている。




大学教授の資産運用ゼミナール


年収300万円で子どもを大学に入れる方法



私立大学の経営と教育